アメリカの貧困 2015 12 6

 今の日本人が思っているアメリカは、
「かつてのアメリカ」であって、
「今のアメリカ」ではない。

書名 いま、日本が直視すべきアメリカの巨大な病
著者 増田 悦佐  ワック

 よもやアメリカで「階級闘争」が起こるとは、
全く想像もできませんでした。
 2011年に「ウォール街を占拠せよ」という大規模な政治運動が起こりました。
この運動では、「我々は残りの99%だ」という主張が記憶に残りました。
つまり、アメリカでは、上位1%の富裕層が所有する資産が激増していることに対する不満です。
一方で、中流階級が急激に減少しているのです。
 こうした不満が大統領選挙の候補者の支持率に大きな影響を与えています。
おそらく、共和党の候補者選びは、迷走するでしょう。
 あれは、いつだったか。
1990年代だったか。
「アメリカ国内の工場を閉鎖して、メキシコに工場を建てれば、
人件費を圧縮できて儲かる」という話を聞いたのは。
 その後、メキシコの工場ではなく、
中国の工場にすれば、さらに人件費を圧縮できて儲かるという話もありました。
 IT技術者についても、
つまりコンピューターのプログラマーについても、
システムをアメリカで開発するよりも、
インドで開発すれば安上がりで開発できるという話も、
10年前に聞きました。
 経済に国境がなくなった現代においては、
安い人件費を求めて、会社は世界の果てまで移転する。
 その結果、アメリカ国内に残った仕事は、
賃金の安い仕事になってしまったでしょう。
 最近、アメリカで製造業が復活してきているという話を聞きます。
しかし、これも、この本によれば、
「受刑者を低賃金で働かせてボロ儲けする民営刑務所」ということが書いてあります。
 これには、補足説明が必要でしょう。
アメリカでは、何でもかんでも「民営化」されます。
刑務所も民営化され、今では、「刑務所産業」が数社で独占されています。
 この「刑務所産業」で働く受刑者の「賃金」は、
中国や新興国の賃金よりも、はるかに安いのです。
 そのため、この本によると、
受刑者という「労働者」を確保するために、
「三振法」という法律があります。
 これは、州によって違いますが、
死刑または1年以上の刑が科せられる重罪の前科が二回以上ある人が、
三回目の有罪判決を受けたら、
三回目は微罪でも終身刑を科せられるという法律です。
 だいたい、若い黒人男性は、
三度収監されたら、死ぬまで安い労働力として、こき使われることが多いという。
 アメリカでは、一流企業が、率先して、
こうした極めて安い労働力を活用しているという。
これが、アメリカにおける製造業の国内回帰の実態かもしれません。
 さて、別の問題も書きましょう。
それは、「学費ローン」の問題です。
 こうした学費ローンが急増していますが、
結局、返済できないという問題があります。
 アメリカは、学歴社会です。
学歴別の収入格差の統計では、
高校卒、大学卒、修士(博士)の収入格差は明白です。
 しかし、アメリカでは、州立大学でも、
年間の授業料は、高額なものになっています。
私立大学になると、かなり高額です。
 2011年10月30日の日本経済新聞Web版には、このような記事がありました。
「アメリカの大学で学費高騰、揺らぐ若者の学歴信仰」
 学費が物価を上回るペースで急騰する一方、
高失業率が長引き、卒業後の就職難も深刻なためだ。
 人種問題が根深い米国では、
客観指標として学歴を重視する傾向が強い。
 学費高騰の背景にあるのが、大学の財政事情の悪化だ。
教職員への福利厚生費など人件費の膨張が止まらない。
勢い、安定収入を見込める授業料への依存度が高まっている。
(以上、引用)
 アメリカ社会の将来は、階級社会かもしれません。
貧富の格差が固定化されると、階級社会が出現します。















































































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